ダン・シモンズの『ハイペリオンの没落』では、時間を逆行する病にかかってしまった娘とその父親が出てきます。娘レイチェルは、時を追うごとに若返り…(適度に若返るなら良いのですが)、ついに赤ん坊にまで退行して死を迎えるという奇怪な病に冒されています。父ソルは、なんとか娘を救おうとして、時空を自在に操る謎を秘めた惑星、ハイペリオンへ旅します。
認知症には、人間が社会性を失って、自然状態へと還っていく側面があります。他人との会話や距離の取り方がわからなくなり、ものごとの関係性(たとえば春の次は夏だとか、仕事が終われば家に帰るだとか)がわからなくなり、着替えや排せつの方法がわからなくなり、食べ方がわからなくなり…。
小刻みに起床と睡眠を繰り返し、排せつする祖母。赤ちゃんへと還っていく祖母。デイサービスやショートが軌道に乗ってきたと思ったら、決まっていつも入院、また24時間つきっきり。父も、母も、気力体力の限界です。
海神よ道示させと浜砂を掬はば零る角貝ひとつ
(わだつみよみちしめさせとはまずなをすくわばこぼるつのがいひとつ
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